アンちゃん

いのちが消えるよ。
大家さんの所のアンちゃんは、あと三日と獣医さんに言われて、
今日が四日目なんだって。
ぐったりして、頭を小刻みに振っている。

初めて会った昨年の春はふくよかだったお腹も力強かった足も見る影がない。
もう十年以上生きてるから、寿命だけど、人間よりもはるかに早い速度で いのちが終わってしまうからつい、寂しくなってしまう。
大家さんが、最後にと、抱き上げて顔を見せてくれたよ。
なんて辛いんだろう。
生気がない目。しんどいのかな。
でも、全て知ってるよ。わかってるよ。 というような目をしていた。
人間の勝手な考えだけど、アンちゃんを大事に思って生きてきた家族に囲まれて最後までゆっくりと生きて欲しいと思う。

仕事帰りに寄ったら、まだ、かろうじて生きている。
でも、もう、虫の息。
辛そうに鳴くでもなく、ただ、床にへばりついて目を閉じるでもなく、
息をしている。
大家さんは友人に「安楽死させてあげな」といわれたといっていたけど、
私は「最後まで生かせてあげてください」とお願いした。
「ここまで生きたんだから安楽死なんてさせない」と言ってくれた。
大家さんも辛いと言っていた。

辛いなあ。悲しいなあと思うけど、
この前YouTubeで見た、保健所で死に行く犬よりは幸せに思えた。
実は、そんなこと、すべてアンちゃんは解っているかのようだった。